末富の創業は明治26年。
「亀末廣」で修業を積んだ初代が、呉服街室町に店舗を構えたのが始まりです。戦後、十分に砂糖が使えるようになると、「一般の方にもおいしいお菓子を」と、堀川ごぼうや鞍馬の木の芽など地の野菜を玉子煎餅と合わせた「野菜煎餅」を考案し一世を風靡します。そんな「野菜煎餅」と並び銘菓と評されるのが、「うすべに」です。
ふっくらと肉厚な青谷の梅を裏ごしして煮詰めた梅あんを使用。
茶人好みの麩焼きを半分の厚みに切って、ざらっとした中面を表にし、そこにほどよい甘さの白蜜を塗りました。 麩焼きの間には梅あんが挟まれていて、そっと手で割ると、しっとりとして柔らか。淡雪のように口の中ですっと溶けてゆきます。 あとに残るのは、梅の香りとほのかな酸味。 麩焼きのシャリッとした食感や、やさしい甘みが余韻となって広がります。 「お菓子はお茶をおいしくいただくためのもの。お茶を引き立てながらも、心に残るものを」と 苦心し作られた干菓子は、品の良い手土産としてもふさわしい一品です。
「白い麩焼きを透かして見える梅あんの薄紅色は、紅梅や春の曙、山に咲く桜花、月下の紅葉といった自然の美しい色合いを連想させます。 四季を問わず茶席に出せる干菓子を、と考えたときに生み出されました」と若主人の山口祥二さん。 伝統の製法や季節を映す菓子に込める心はそのままに、時代に即したもの作りをすることも、菓子店の務めなのだといいます。