10グラムにも満たないショコラに
料理の美学を表現する
婦人画報 2024年2月号より
「レストラン パージュ」エグゼクティブ・シェフ 手島竜司さん。
26歳で渡仏、数々の名店で修業後、2014年に開業。2016年、ミシュランガイドで一ツ星を獲得。
パリ16区にある手島竜司さんの店「レストラン パージュ」は、連日満員の人気料理店。
曰く「フランスの食材で日本人の味覚を表現した」料理の繊細な味わいで美食家たちを魅了していますが、京都にアトリエを構え、チョコレートをはじめとしたスイーツを手掛けることに。
「店に来てもらえる人数には限りがありますが、もっと多くの人に『パージュ』の味を届けたい」
そんな思いで作るチョコレートは、手島さんの料理人としての美学と技術が凝縮した味わい。「チョコレートを料理として捉え、自分の舌で選んだ最高の食材を使って、ひと粒でガストロノミーを表現します」
素材は自らの舌と感覚で選び抜く。
材料のひとつとして使用している製菓用チョコレートはパリの高級ショコラティエ「プラック」のもの。
チョコレートは鮨のようだと手島さん。「シンプルな材料で作った、ミニマムな一貫に感動する。それは技術と感覚と経験の賜物です。チョコレートひと粒でも人を感動させることができるはず」。
複雑な味を10グラムほどのチョコレートで表現するには、0.5ミリ単位の薄さにまでこだわる厳密さと食材を見極める力が必要。「それこそが僕が作りたいチョコレートです」
料理人である手島さんが味の完成形をディレクションし、チョコレートに精通するスタッフとの共同作業で緻密に創り上げていく。
チョコレートは日常にちょっとした特別感を与えてくれるもの。だから、ひと粒でより多くの幸せを届けたいのだと言います。
「ひと筋縄ではいかない素材。向き合うには壁もたくさんありますが、同時にそれは魅力でもある。『もっとできることがある』と教えてくれる。面白くてやめられません」