1689(元禄2)年に創業した京うちわの老舗「阿以波」(あいば)。宮廷で用いられた‘御所うちわ’を由来とする‘京うちわ’を手作業でつくり、販売しています。中京区の柳馬場通りにある店と、工房を訪ねて、京うちわの魅力を現当主10代目の饗庭智之さんに語っていただきました。
- 阿以波の歴史
- 元禄2(1689)年、初代長兵衛が近江の国の“饗庭(あいば)”から、都に出て店をひらいたことに始まります。七代目から、うちわ専門店となり、御所うちわの伝統を伝える“京うちわ”を作り続けてきました。現当主は、その十代目。「阿以波」のみとなった京うちわの製作技術を今に伝えるとともに、新たな「うちわ文化」を創造し続けています。
工房は、店から少し離れたところにあります。大きく広い空間で、饗庭さんを含め4人の職人さんが、静かに作業を進めていました。「京うちわ」は、うちわ面と柄を別に作り、後から柄を差し込む「差し柄」の構造となっています。宮廷で用いられた「御所うちわ」がルーツ。柄は、ときに漆に金彩を施すなど、優美な趣もあります。 阿以波では、うちわの骨となる竹の加工から紙の張り合わせ、 仕上げまで、すべてを手作業で行っています。竹は丹波の四〜五年もの、紙は越前・八尾(やつお)の手漉き楮(こうぞ)紙を、柄の部分は 栂(とが)・杉材を用いるなど、国内産の材料にこだわっています。
- 情緒あふれる佇まい
- 店の建物は、200年以上前の家で、ここでずっと暮らしているとのこと。京うちわを、現代の家やマンションで飾ってもらおうと、掛け軸のように飾る新しい提案を考え出しました。店には、他にもうちわを飾るアイデアのヒントがいっぱい詰まっていて、思わず長居してしまいたくなる素敵な空間です。